民法の条文が任意規定であり、当事者の特約があれば排除できるということは
以前の記事で述べたとおりです。
そしてそのこころ(趣旨)は、私的自治にあることも述べました。
では、私的自治の原則から、契約書で定めれば、なんでも
許されるかというとそうでもありません。
民法は第90条で公序良俗という限界を設けています。
(「公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。」)
これはどういうことかをざっくりといいますと要は、
「あまりにも非常識な契約は無効となります」ということです。
なにが非常識かというのは曖昧ですね。
この曖昧さがかえってこの条文の「ミソ」となっていて、
最終的には公序良俗に反するかどうかは裁判所が決定することになります。
例えば、少し前に問題となった事例としてアパートの大家さんが
「子供の泣き声がうるさくて迷惑になるから」という理由で
賃貸借契約書に「入居する方は子供を作らないこと」という
条項を設けました。
借り手の夫婦も納得して借りました。しかし子供ができたので、
大家さんが契約違反を理由に夫婦を追い出そうとしたところ、
裁判所は、「子供を作らないというような契約条項は
公序良俗に反するから無効となる」と判断しました。
なにが公序良俗違反かは最終的には裁判所の専権判断となりますが、
それは裁判所が社会情勢や人権尊重の理念などから判断できる、
この曖昧さがかえってこの条文の「ミソ」となっています。
このように、私的自治の原則により契約は自由であるものの、
公序良俗による限界はあるということも民法随所で
出てくる基本的な事項となります。
もちろん、商法その他の各私法で共通するルールとなってきます。